5軸加工では、一つの工具姿勢を実現する解が複数現れることがあります。自由度を上げるために加工軸を増やしたのですから、これは当然の帰結です。
しかし実際の加工では、そのうち一つを選ばなければなりません。その基準の一つが、姿勢を滑らかに変化させることです。直前の姿勢に近い解を選べば、動きの急変を避けられます。
では、その「近さ」は何で測っているでしょうか。
工具の向きだけを見るのであれば、向きを1本の単位ベクトルで表せます。
直前の向きと候補の向きの内積をとれば、その値が近さを表します。内積が大きい候補ほど近く、工具軸まわりの回転が自由な加工であれば、これで十分です。
しかし姿勢そのものを比較したい場面では、この内積による評価では足りません。工具軸まわりに回転した姿勢を、内積はすべて「同じ」と判定してしまうからです。
では、どう測るか。
実装は簡潔で、姿勢を3本の単位ベクトルで表し、同じ役割として対応するベクトルの内積を3つ足すだけです。
問題は、この素朴な足し算に何の根拠があるのかという点にあります。
本稿では、この足し算が、2つの姿勢を隔てる回転角による評価と一致することを順に確かめていきます。